複式慕記

漫画本棚の記録。概要は「本棚の目録・リンク」より。記事の日付は投稿順によらず、全て当ブログ開設日の2018年5月9日付となっています。Twitter:やつはし(@rare_and_baked)

本棚【老人】

※H30.8.13本棚作成

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 (写真はH30.8.13付)

・R5.5.22仕訳『マンガぼけ日和(かんき出版)』矢部太郎を【老人】の本棚に追加

・R2.8.2仕訳『ファミリーレストラン太田出版)』雁須磨子を【老人】の本棚に仮で追加

・R1.10.19仕訳『利平さんとこのおばあちゃん(エンターブレイン)』法月理栄を【老人】の本棚に追加

・R1.6.10仕訳『くそばばの詩(青林堂)』山松ゆうきちを【老人】の本棚に追加

・H31.4.16仕訳『タピシエール(秋田書店)』関根美有を【老人】の本棚に追加

 

《摘要》所感

スペリオールの2018年8月24日号、浅野いにおの『TEMPEST』を読んでどうしようもない気持ちになり、この棚を作った。

シグルイ』や『バキ』ではその道の達人として、『乙嫁語り』や『かむろば村へ』では暮らしの生き字引として、『極楽ミシン』や『古本屋台』ではひとかどの趣味人として、それぞれ老齢のキャラクターが描がかれている。『しわあせ』と『レオン・ラ・カム』の爺ふたりは、人の欲や個性が誇張・濃縮されたような存在だ。

比べて『TEMPEST』の“最後期高齢者”は“キャラクター”とは言い換えがたい。デフォルメされつつも精緻な絵と、直接的な表現が、読者に抽象化を許さない。人間が図鑑の挿絵のように描かれていると言ったらいいだろうか。高齢である事が漫画でどう描かれていくのか、今後の基準になる作品だと思う。

小田扉の『江豆町』に出てくる「江豆ジャンケン」は、宇宙・乗り物・犬・老人の4すくみ。老人は犬に負け、乗り物とあいこで、宇宙に勝つ。よくわからないが著者の世界観だなと納得してしまう感じがある。詩的にも哲学的にもなりすぎない良さがある。

作中に老人が登場すると「何をリアルに感じるか」という価値観が、作者・読者とも試されるのだと思う。齋藤なずなの『夕暮れへ』に、高齢者をテーマにした2編の傑作がある。生々しく、実感を伴って読める。他にも本になってない作品が多くあるようなので、地道に探して読んでみたい。

アックス86号には、関根さんの『ユングフラウヨッホ』が掲載されている。老夫婦と孫の三人のお話で、『はびこる愛』収録の『アルプススタンド』をリメイクした作品だ。いくつものテーマが内包されたとても懐の深い短編なのだが、この二人もまだ「最後期高齢者」の手前で、先の人生があるのだと思うと読み方も変わってくる。

このテーマにまつわる作者の工夫は、時にささやかだが、総じて作意の核心に触れるものだろうと思う。注意深く読みたい。