複式慕記

漫画本棚の記録。ご案内は「本棚の目録・リンク」より。Twitter:やっさん(@rare_and_baked)

本棚【老人】

※H30.8.13本棚作成

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 (写真はH30.8.13付)

 

《摘要》所感

スペリオールの2018年8月24日号、浅野いにおの読切『TEMPEST』が凄かった。読んでどうしようもない気持ちになり、何か手がかりにと、この棚を作った。

シグルイ』や『バキ』ではその道の達人として、『乙嫁語り』や『かむろば村へ』では生活の先達として、『極楽ミシン』や『古本屋台』ではひとかどの趣味人として、それぞれ高齢のキャラクターが描かれている。『しわあせ』と『レオン・ラ・カム』の爺ふたりは、人の欲や個性が誇張され、濃縮されたような印象を受ける。比べて『TEMPEST』の「最後期高齢者」は「キャラクター」とは言い換えがたい。デフォルメされつつも精緻な絵と、直接的な表現が、読者に抽象化を許さない。人間が図鑑の挿絵のように描かれていると言ったらいいだろうか。高齢者が漫画でどう描かれていくのか、今後の基準になる作品だと思う。

小田扉の『江豆町』に出てくる「江豆ジャンケン」は、宇宙・乗り物・犬・老人の4すくみで、老人は犬に負け、乗り物とあいこで、宇宙に勝つ。氏の世界観だなと納得してしまう感じがある。詩的にも哲学的にもなりすぎない良さがある。

作中に老人が登場すると、漫画をリアルに感じるための価値観が、作者・読者とも試されるのだなと改めて思う。齋藤なずなの『夕暮れへ』に、高齢者をテーマにした傑作が2編ある。生々しく、実感を伴って読める。他にも本になってない作品が多くあるようなので、地道に探して読んでみたい。

アックスの86号は関根さんの『ユングフラウヨッホ』が掲載されている。老夫婦と孫の三人のお話で、『はびこる愛』収録の『アルプススタンド』を書き直した作品だ。いくつものテーマを内包したとても懐の深い短編なのだが、この二人もまだ「最後期高齢者」の手前で、先の人生があるのだと思うと読み方も変わってくる。

このテーマにまつわる作者の工夫は、時にささやかだが、総じて作意の核心に触れるものだろうと思う。注意深く読み比べて、もう少し考えを進めていきたい。